なぜ自己制御型ヒータはオーバーヒートしにくいのか
ヒータ出力と放熱量の絶妙なバランス
ヒートトレースを導入する際、
「自己制御型ヒータはオーバーヒートしにくい」
という説明を耳にすることがあります。
しかし、なぜオーバーヒートしにくいのでしょうか。
その理由は、自己制御型ヒータが持つ特殊な発熱特性と、配管から逃げる熱量の関係にあります。
今回はヒータ出力と放熱量のバランスという視点から解説します。
ヒータは熱を加え、配管は熱を逃がしている
ヒートトレースの基本は非常にシンプルです。
ヒータは配管へ熱を供給し、配管は周囲へ熱を放出しています。
つまり配管温度は、
ヒータが供給する熱量
と
外部へ逃げる熱量(放熱量)
のバランスによって決まります。
放熱量は温度が高くなるほど増える
配管が冷たいときは周囲との温度差が小さいため、逃げる熱量はそれほど大きくありません。
しかし配管温度が上昇すると、
- 空気との温度差が大きくなる
- 保温材表面からの放熱が増える
- 風による熱の放散が増える
ため、放熱量はどんどん大きくなります。
例えば外気温0℃の環境で、
- 配管温度が20℃
- 配管温度が50℃
- 配管温度が80℃
となるにつれて、逃げる熱量は大きく増加します。
つまり温度が高くなるほど、配管は自然に冷えようとする力が強くなるのです。
一定出力型ヒータは出力が変わらない
一定出力型ヒータは名前の通り、温度が変化しても決められた出力を出し続けます。
例えば20W/mのヒータであれば、
- 10℃
- 40℃
- 80℃
であっても基本的には同じ熱量を供給します。
そのため温度が上昇してもヒータ出力は下がりません。
放熱量がヒータ出力を上回る温度で平衡状態になりますが、制御を行わないと必要以上に高温になる場合があります。
そのため一般的にはサーモスタットや温度コントローラーを使用して温度管理を行います。
自己制御型ヒータは出力が下がる
自己制御型ヒータの最大の特徴はここです。
内部の導電性ポリマーが温度変化に応じて抵抗値を変化させるため、
温度が低いときは
- 抵抗値が低い
- 電流が流れやすい
- 発熱量が大きい
状態になります。
反対に温度が上昇すると
- 抵抗値が高くなる
- 電流が流れにくくなる
- 発熱量が小さくなる
状態になります。
つまり、
温度が上がるほどヒータ出力は下がる
という特性を持っています。
出力は下がり、放熱量は増える
ここが自己制御型ヒータの本質です。
配管温度が上昇すると、
ヒータ側
出力が小さくなる
↓
配管側
放熱量が大きくなる
↓
ある温度で逆転する
↓
それ以上温度が上がりにくくなる
という状態になります。
つまり自己制御型ヒータは、
ヒータ出力の低下
と
放熱量の増加
が自然に釣り合う温度へ収束していく仕組みなのです。
重ね巻きでもオーバーヒートしにくい理由
配管のバルブやフランジでは、ヒータを重ねて施工することがあります。
自己制御型ヒータでは重なった部分の温度が上昇すると、その部分だけ出力が自動で低下します。
つまり、
温度上昇 ↓ 出力低下 ↓ 発熱抑制
という制御が局所的に働きます。
このため重ね巻き部分でもオーバーヒートしにくい構造になっています。
だから設計が不要というわけではない
自己制御型ヒータは非常に安全なヒータですが、
- 維持温度
- 外気温
- 保温材
- 配管サイズ
- 防爆エリア
などを考慮した熱設計は依然として重要です。
自己制御機能は安全性を高めるための仕組みであり、適切な設計を不要にするものではありません。
テクノカシワが考えるヒートトレース設計
ヒートトレースでは、
「逃げる熱量」と「供給する熱量」
のバランスを正しく見極めることが重要です。
テクノカシワでは熱計算をもとに、
- 自己制御型ヒータ
- 一定出力型ヒータ
- MIヒータ
の中から最適なシステムを選定し、設計から施工・保守まで一貫して対応しています。